初期配置・理論編

カタンで勝つために初期配置はすごく大事です。交渉や建設も大事ですが、変な初期配置による不利を覆して勝つのは簡単ではありません。しかし、初期配置では考えることが非常に多いため、覚えたてのプレイヤーはあれこれ考えた挙句の果てに最善から遠い配置をしてしまうことも少なくありません。

そこで、ベストではなくても、最低限大きく不利にはならないような初期配置について説明します。まずは、このページでは理論編として、前半は「良い初期配置をするために何を考えるべきか」を、後半は「手番による考えるべきことの優先順位」をそれぞれ説明します。

考えるべきこと

初期配置でどこに家(開拓地)を建てるかを選ぶときは、基本的に次の項目を考えます。基本的に上に書いたものほど優先順位が高くなりますが、手番や、1軒目か2軒目かでも何を重視するか異なります。

重視する項目その理由
総生産力資源がたくさん出るほうが開拓がしやすい。出ない資源があっても、交渉で多くの枚数を出したり、数を集めて港や銀行で貿易すれば賄える。
資源の多様性同じ生産力なら、いろいろな種類の資源が出たほうが、貿易や交渉による損失が少なくてすむ。
貴重な資源場に高い(出にくい)資源があると有利な交渉ができる。
発展性初期配置の2軒だけで戦うわけではない。
出目の多様性同じ生産力なら出目をばらした方がバーストのリスクが下がる。
他のプレイヤーの邪魔他のプレイヤーに理想的な配置を与えないようにしよう。

それでは、それぞれの項目に対して説明をしていきます。

1.総生産力(資源がたくさん出るか)

多くの場合、初期配置で最も重要な項目です。多くの人が得意な戦術や好きな資源があると思いますし、それを否定はしませんが、勝ちたければ好きではない資源の組み合わせであっても、生産力の高いところを取るほうが有利です。カタンでは、現在は不要な資源であっても交渉や貿易により他の資源に交換することができますので、資源がたくさん出てまず損はありません。生産力について議論するためには確率の知識が不可欠です。2個のサイコロを振ったときに最も出やすい合計の数字は7ですが、7はご存じの通り盗賊なので、最も資源が出やすい土地は次に出やすい数字である6と8で、確率は5/36です。7から離れるごとに1/36ずつ確率が下がり、最下位が2と12の1/36です。もちろん実際のゲームでは偏ることもありますが、平均すれば「6」は「2」より5倍多く資源が出る計算になります。従って、2や12の土地はなるべく避け、6や8、あるいは5や9の土地を取るようにしましょう。

数字の合計7(盗賊)6, 85, 94, 103, 112, 12
出る確率6/36 = 16.7%5/36 = 13.9%4/36 = 11.1%3/36 = 8.3%2/36 = 5.6%1/36 = 2.8%
生産力-54321

実際は最大3枚の土地に接するように家を置きますので、土地単体でなく、3枚の土地それぞれから資源が出る確率の合計を比べます。確率をそのまま使うと分数が多く見づらいので、資源が出る確率の36倍を「生産力」と呼びこれで比較することが多いです。例えば5・9・10の土地に接するところに家を建てれば生産力は4+4+3=11となります。ABC配置の各パターンにおける生産力を一覧にしましたので、参考にしてください。

2.資源の多様性(出る資源の種類が多いか)

生産力の次に重要な要素です。(ただし、後述する「3色」の回避は、少々は生産力を犠牲にしても行いたいです。)余った資源は交換できると書きましたが、実際は交渉で常に1:1で交換できるわけではありませんし、港や銀行との貿易はもっとレートが悪くなります。従って、同じ生産力の場合は、取れる資源に多様性があるほうが強いです。俗に「5色」と呼ばれる、5種類すべての資源を(生産力2以上で)自給できる形が理想的ですが、なかなかそんな配置ができるケースはありません。それでも、最低でも4色にはしたいし、さらに言えば、4色の配置に甘んじる場合でも、次に建てる家で5色目が手に入る形が望ましいです。3色以下では、かなり特殊なケースでなければ勝つのは困難でしょう。

3.場に高い資源の生産力(貴重な資源が出るか)

ほとんどの島で、「6・8・5・9などの目が多い」資源や、「2・12・3・11などの目が多い」資源が現れます。言うまでもなく、前者の資源が出やすく、後者は出にくくなります。これを「安い」や「高い」という言い方をすることもあります。安い資源は他のプレイヤーの手元に余ることが多いので交渉でもらいやすいでしょう。逆に、高い資源は持っている人が少なく、持っていても枚数がないことが大半なので交渉で出にくいでしょう。その裏返しで、安い資源を出す交渉をしても欲しがる人は少ないので成立しづらく、高い資源を出す交渉は成立しやすくなります。同じ生産力なら高い資源を持っているほうが交渉で有利な立場になれますので、可能ならば高い資源を取りましょう。

4.発展性(将来伸びるか)

カタンは当然初期配置の家だけで戦うわけではありません。ゲームが進むに連れて家を新たに建てていきますので、3軒目をどこに建てるかも視野に入れたいです。例えば、近くに有用な港(特に一般港とも呼ばれる3:1港は強いです)や、初期配置で取れなかった資源の土地がある場所は、次の家を建てることで大きく有利になるので、そのような場所に初期配置の家を建てたいところです。逆に、自分が3軒目の家を建てたいところの隣に、誰かが初期配置で置きそうな場所は避けましょう。。(自分が家を建てられなくなる。)

5.出目の多様性(資源が出る目の種類が多いか)

例えば「3・4・9」に2軒の家があるのと、「3・4・9」と「11・10・5」に1軒ずつ家があるのでは、生産力は同じですがどちらが有利でしょうか。一般的には、後者です。なぜならば、1ターンの間に出る資源の量は、後者は比較的安定しているのに対して、前者の場合は極端に少ないか極端に多いかになるからです。そして、大量の資源を持っているとバーストして手札を捨てるリスクが増えるので損です。同じくらいの生産力ならば、なるべく目をばらけさせたほうが良いでしょう。

6.他のプレイヤーの邪魔

以上が初期配置を決める際に考慮する内容ですが、カタンは4人でプレイするので、自分以外のプレイヤーも上記のような理想的な初期配置を目指しています。もし、自分より後に初期配置をするプレイヤーが、理想的やそれに近い初期配置をできる場所がありそうならば、それを阻止するのも一つの考えです。彼(彼女)が初期配置の家を建てようとしている場所や、その隣に家を建てて、それを妨害してしまいましょう。もちろん、阻止するためだけに自分が不利な初期配置をしては元も子もないですから、自分がそこに家を建てた結果も、上記の条件をいくつか満たしている必要はあります。

道の引き方

家の建てる場所だけ述べて、初期配置でもう一つ大事なこと、道の引き方についての記述がないと思った方もいるでしょう。あえて書かなかった理由は、考えるほどのこともないからです。「海に向けて」引いておけばほぼ間違いがありません。海に向ける理由は二つあります。一つは、内陸に向けた場合、その先に後で初期配置するプレイヤーに家を建てられて、道が死んでしまうことがほとんどだからです。(ただし、内陸でも砂漠の周りは家を建てることが少ないので、砂漠に向ける選択はあり得ます。)もう一つは、海に向けることで、ゲーム開始後に港を取りやすくなるからです。多くの場合3番手の2軒目までは、海に向けて引く以外の選択は事実上ないと言っても過言ではありません。2番手の2軒目と1番手の2軒目だけは、初期配置の道を内陸に向けることを検討しても良いかもしれませんが、それでも内陸に向けて引くのが最適になる盤面は、5〜10%くらいでしょう。

初期配置の際にやたらと港を気にする人、港に飛び込むのを好む人がいますが、基本的には初期配置に港、特に専門港(特定の資源の2:1港)は不要です。(専門港戦術というのもありますが、それが強い盤面はかなり限られますし、港だけで勝てるほどカタンは甘くありません。)なぜならば、序盤に港があってもそもそも生産力が低いので港で交換できるほど資源が余ることは少なく、かつ他のプレイヤーとの交渉で資源を手に入れるほうが安上がりなことが多いからです。家や街がたくさん建って資源がだぶつき始め、リードしているプレイヤーとは交渉してもらいにくくなる中盤以降にならないと、港は価値を発揮しません。それゆえ、港はゲームが始まってから取りに行けば十分です。そのため、初期配置で港を取らなくても、使いやすい港(最も使い勝手の良い3:1港があれば理想、なければ生産力の高い資源の港)が近くにあるかは重要です。


手番による優先順位

1番手1軒目 〜最高生産力が大原則〜

生産力を最重要視します。資源の組み合わせや出目の分散を図っても、2軒目の家は最後のため、他のプレイヤーの選択によりうまくいかないことが多々あるからです。(生産力の高いところを2番手以降に残すと、2番手以降は自分より高い生産力を持って、自分より柔軟にもう1軒を選べるのですよ。どうやって勝つつもりですか?)ただし、高い資源を取れるなら生産力1の差は目をつぶれます。また、2軒目で取れる資源の目途が立たないので、同じく生産力1の差なら2色を避けて3色にするのは良いでしょう。

2番手1軒目 〜高生産力をベースに5色狙いや高い資源の確保を〜

基本的には1番手と同じ理由で次に生産力が高いところが基本ですが、同じ理由で2色もできれば避けたいです。(特に安い資源の2色は最悪です。)もし高い資源が残っていれば進んで取りましょう。ある資源の良い土地が一つしかないとき、1番手と対角線の位置に置いてしまえば3番手以降はその土地を取れないので、場を強く支配することができますが、代わりに3番手・4番手からの盗賊も飛んできやすくなりますので、よく考えましょう。1番手よりはまだ2軒目の配置を考えやすいので、2軒目に取れそうな資源(その2種類の資源が隣接している場所が複数ある)を後回しにして5色を狙うのも一つの考え方です。他に考えることとして、できれば1番手と違う資源を取ることで、確実に交渉できる相手を確保したいです。

3番手1軒目 〜候補を3軒挙げてどこが鍵になるか考えよう〜

ここから少し考えることが変わってきます。具体的には他のプレイヤーの妨害を視野に入れます。4番手は2軒を自由に選べるので、生産力が高くで5色で高い資源もあるような配置を容易に許してはいけません。自分が取りたいところはおそらく4番手も取りたいでしょうから、その場所を3〜4個選び、4番手が自由に選べるとしたらその中でどの2軒を取りそうか考えます。4番手がどの組み合わせを取っても自分が取れそうなところは後回しにします。逆に4番手が絶対に欲しがりそうな場所は先に取ってしまいましょう。特に高い資源がまだ残っている場合はほぼ確実に取るべきです。

4番手 〜有利なプレイヤーの警戒も怠るな〜

2軒を連続して置ける特典を活かして、上記の条件をなるべく満たす配置を考えましょう。また、1〜3番手の1軒目に置いた家を見て誰が有利なのか判断し、有利な人が理想とする2軒目の配置を潰すことも考えます。大会を除き2軒目の家をどちらにするかは自由に選べることが多いです。そのときは土と木があるところを2軒にすれば開幕で資源が出なくてもすぐに道を引けます。あるいは、2・3・11・12といった目が含まれるほうを2軒目にすれば、その資源を最初から1枚持ってスタートできるので生産力の弱さをある程度カバーできます。

3番手2軒目 〜4番手の配置は予想通りだったか振り返る〜

1軒目で取れなかった資源を補い、5色で出目の被りも少ない配置を狙うのが基本になります。どうしても出目が被る場合は、木と土、麦と鉄のように同時に使う資源の組み合わせならそこまでリスクはありません。4番手の配置が予想通りなら、あまり考えなくても置けるでしょう。また、4番手の置き方を再確認した結果、1・2番手の有利なほうに理想の2軒目が残りそうならば、それを与えないことも考慮しましょう。

2番手2軒目 〜3軒目まで考えて組み立てよう〜

ここまで来ると良い土地が少ないことがほとんどですが、理想は5色、最低でも4色とそこそこの生産力を両立したいところです。特に砂漠周りは意外と穴場が残っていることが多いのでおすすめです。初期配置では4色に甘んじる場合でも、取れなかった資源の土地に向けて道を伸ばし、ゲームが始まってからそこに家を建てれば、結果的に5色にできます。どうしようもないときはまずまずの生産力を有し、かつ有効に使えそうな港(3:1港または生産力4以上の資源の専門港)に飛び込む作戦もありです。また、上に書いたように1番手がその先に家を建てないであろうことがほぼわかる(1番手がそこに置くと3色や低生産力になる)場合は、道を内陸に向けることもあります。

1番手2軒目 〜困ったら港に飛び込んだり内陸に道を引いたりもあり〜

さすがに選択肢はほぼありませんが、残された土地から生産力の良い場所、4色以上にできる場所を探しましょう。状況によっては2番手同様に、港に飛び込んだり、道を内陸に向けたりすることも考慮します。また、最初に建設ができる1番手の特権として、2軒目で木と土を取っておけば、誰よりも先行して道を引けるので、近くにある他のプレイヤーの道を分断することも可能です。(ただし、そのプレイヤーの恨みを買うので、実行するのはそのプレイヤーがかなり有利な配置をしている場合だけにしましょう。)

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